第1回(1月26日)

第2回(2月10日)

第1回「多文化共生社会って何?」

研修会の内容

13:30 司会者あいさつ(松田葉子さん)による。

今、岡山県内には2万人を超える外国人が住んでいますが、これは増加傾向にあります。 私たち支援者は、今回の研修会で、異なる文化や言語の人たちと協力し合ってどのような地域社会を作って行けばいいか、 何が課題となるのか考えたいと思います。

13:35 開会あいさつ(近藤みち子さん)による。

この事業は、人権パートナーシップ推進事業として岡山県から助成金を貰って実施しています。 この研修会は、今日の第1回と2月10日の第2回にわけて開催されます。共に岡山県内に住む外国人の問題を 私たちの問題として考えて、何かできることを一つずつでもしていきたいと思います。

13:40 「多民族・多文化社会のまちづくり~わたしたちにできることを考える~」

講師:吉富志津代氏(多言語センターFACIL理事長)の講演です。
(1)在日外国人を取り巻く社会
まず、最初に「外国人って何だろう?」と考えてみて下さい。

現在、日本の外国人登録者数は、約208万人を超えており、岡山でも2万1,000人を超えています。 この208万人のうち45万人は、曾祖父母世代から日本に住んでいる在日朝鮮・韓国人です。 彼らも3、4、5世の時代になりました。この中には日本語しか知らず、日本しか知らない人も含まれます。 もちろん、曾祖父から受け継いだ習慣的なものは残っているかもしれませんが、 日本社会しか知らない人が45万人の中には多く含まれています。これら45万人のうち、毎年、 約1万5,000人が日本国籍を取得しています。こうして見ると、日本国籍を所有している人でも、 既に、違う文化や習慣、言葉を持っている人も育っています。群馬県大泉町には、 約6,700人の日本国籍のブラジル出身者が住んでいますが、国籍を留保してる人を入れると約8,000~9,000人が居住してます。 そこの町長選挙では、投票所にポルトガル語の案内が置かれているほどです。 この事例に見られるように、日本に居住している住民が多様になったと言えます。私たちはこの点を押さえ、 「私たちの隣には色んな人が住んでいる」ということを知らなければなりません。だから「外国人って何?」との問いには、 「違う文化の背景を持った人たち」と考えていただければ良いと思います。今、圧倒的に日本の文化の動きを後押しているのは、 「ニューカマー」と呼ばれる人たちです。私たちの支援活動もその人たちへの対応が多いです。 しかし、それは対処療法に過ぎません。私たちは、根本的なところから日本社会を考えなければなりません。 現在、在留資格は27種類あります。外国人登録をしている人も、いろんな目的・背景で来日しています。 外国人といってもどこからどこまでが外国人か分からないし、様々な背景があります。
在日外国人を取り巻く社会の動きは、1990年に入管法一部改正があり、日系人が永住者として受け入れられるようになりました。 当時私は、神戸の領事館で勤務していましたが、領事館のように言葉の通じる所はまさに「駆け込み寺」状態でした。 この頃から、日本に住む南米人が増えて一般の日本人にも外国人と暮らすことが一般的になり始めました。 ブラジル国籍の方は、今、日本に約30万人住んでいますが、「日本はポルトガル語が通じる国の第四位」と 言われているほど多いのです。
私たちの支援活動は、昔、運動家の活動としての位置付けだったのが、最近では、 「市民活動」として横のつながりが重要視されるようになりました。支援活動を始めて18年が経過すると、 国や自治体から色んな施策が施されました。私は、総務省の「多文化共生社会推進プログラム」を大変評価しています。 このプログラムは、①コミュニケーション支援、②生活支援、③多文化共生の地域づくり、 ④多文化共生施策の推進体制の整備から成ります。先日、人権意識調査が行われましたが、 その質問の中に「日本国籍を持たない人でも、日本人と同じように人権は守るべきか?」という問いがありますが、 これに「はい」と答えた人はわずか54%しかいませんでした。人権とは、何も「参政権」を指すのではなく、 普段の生活の中にあるものです。日本社会では、その意識が低いのです。

(2)神戸での支援活動~阪神大震災の体験から~考えてみて。
私たちの意識が大きく変化したのは、1995年の阪神淡路大震災でした。 この震災では、そこに住んでいる人の意識を大きく変えました。被災地には、約8万人の在日外国人がいて、 その中で日本語を理解できなかった方は、約3万人いたと言われています。阪神大震災の大規模災害の時に、 言葉がわからないことは状況が把握できなくて大変なことです。被災地支援をする自衛隊を見て「クーデターが発生した」 と思った人も居たようです。でも、これは言葉だけの問題ではありません。関東大震災の時には、「朝鮮人が暴動を起こした」 とのデマのため、多くの方が虐殺されましたが、在日韓国人は阪神大震災の時にこれを思い出して、怖い思いをしたそうです。 しかし、当時の日本社会はこうしたデマを打ち消す力があったので大事には至りませんでした。
震災当時に、カトリック教会に放送局を立ち上げたきっかけで始めましたが、現在は、「FMわいわい」として 11言語の放送局となりました。インターネットで全世界にも配信しています。この放送局の登場により、私たちは、 情報発信できるようになりました。震災当時は、日本語の新聞を翻訳したり、 罹災証明証の取得情報を発信して、地域の方の役に立てることができました。
「多言語センターFACIL」は、今、28言語で翻訳・通訳事業をしています。外国語が堪能な方の雇用創出, 翻訳・通訳の仕事をしています。電子レターで行政が発信しにくいような情報を発信しています。 例えば、「日本で家を買うときにどのような手続が必要か?」、「日本人と結婚して来日したが離婚したらどうなるか?」 といった場合の制度などについて情報を発信しています。これはインターネットで配信していますので、 是非ごらんになって下さい。文字情報と音声情報9言語で対応しています。また医療通訳などの面でも、 医療通訳システム構築のためのモデルとして取り組んでいます。
「ワールドキッズコミュニティ」では、子どもたちが楽しく学校に行けるための活動をしています。 このように、日本の学校で授業について行くことが困難であっても、子どもたちが自信を無くさないように、 「頑張りたい」と思うきっかけを掴んで欲しいと思います。他には、ITを利用した活動をしたり、高齢者・障害者支援、 日本語教室、子どものための日本語学習補助、多言語相談窓口、調査報告書・要望書を作成しながらの啓発活動にも 力を入れています。
私たちが阪神大震災で気付いたのは、「住民自治の意識」でした。これは自分達で街作りに参画するということです。 阪神大震災のように大規模な災害が発生したら、行政はあてにはなりません。自分で何とかしなければなりません。 震災では、隣人との関係が生死を分けました。隣人との繋がりが密接な地域では、お互い助け合って助かることができました。 私たちは小さいときから多数決に慣れてきました。必ずしも多い意見が正しいとは限りません。 私たちに気付かない問題を持っているかもしれません。例えば、私たちは9言語で情報発信していますが、 他にも「易しい日本語」でも情報発信をしています。これは、日本語能力がまだ十分で無い方向けに発信したのですが、 これを見て喜んだのは日本人の高齢者の方でした。介護保険などの制度の説明は、難しい言葉で書いてありますが、 易しい日本語で解説することで、わかりにくい制度をわかりやすく説明することができました。
こうした活動から見ますと、「日常からめざす多文化共生のまちづくり」とは、人権という概念を頭で考えるのではなく、 共感するための仕掛けとして蓄積し、ネットワークを広げること、少数者の視点による社会改善、 対処療法的な普段からの安心で安全な社会作り、外国人コミュニティの自立と同じ住民としての意識作りが必要です。 これが多文化共生のまちづくりです。

(3)人権意識と政策の改革へ
私たちは、「体験→相互理解→共感→実行→ルール・施策」という流れをたくさん積み重ね、 人の意識と政策を改革しなければなりません。多文化共生のまちづくりは、多様性を重視し、これを調整して、 良い街をつくるということです。こうした仕掛け作りには、手間もコストもかかります。 私は、18年前にこうした活動をはじめましたが、周囲は確かに変化したと実感しています。 私ができることはものすごく小さいことかもしれませんが、ずっと継続していれば少しでも進むと感じています。 もともと「これをすれば大丈夫だ」という施策なんてありません。施策を作るまでにもたくさんの積み重ねがありますが、 これを活かすには社会の意識が変わることが必要です。私たちは両方を考えて、まちづくりをしなければなりません。
このようにすべての住民にとって安心で安全、多様で豊かな社会とは、当事者のハンディをサポートして、 彼らが発信できる力や元々持っている力を引き出すようにしなければなりません。これを実現し、 さらにネットワークや技術を駆使することで、私たちにとっても豊かな社会ができると思います。ただ、 「在住外国人がかわいそうだから支援してあげる」という意識でしていたら、いずれ、支援対象者であった方に対して、 「あの人は私が助けてあげたのに私より給料たくさん貰ってる」などと嫉妬心が生まれます。 これが生れると、「外国人が日本人の職を奪う」と排除が始まります。だから、同じスタートラインに並ぶまではサポートし、 その先はライバルとして一緒に力を発揮して街を豊かにしていく意識が必要です。

吉富先生の場合、「阪神大震災」という体験があったから、現在の活動の成果に結びつけられていますが、 私たちのように、震災を経験していない場合、「体験」という部分をどう考えたら良いでしょうか。
私たちの場合は、たまたま「震災」という大きな災害があったのですが、何年か経ったら、意識は元に戻りつつあります。 だから、私たちも地域の祭りを開催するなどして、小さな体験を積み重ねています。
地域の防災訓練を多言語で実施するとかが必要で、マイノリティーの人たちも呼ぶのが大事です。 そういった訓練をすることで、地域にはマイノリティーの人たちが住んで居るんだということを知る目的で 実施することが必要だと思います。
14:35 NPO法人メンターネット 岡崎博之理事長の講演です。

私は、13年前から岡山ユネスコ協会設立や、行政書士として入国管理局への仕事が多かった縁で外国人支援活動に 関わってきました。私は、4年前に、「NPO法人メンターネット・外国人サポートセンター」を設立しました。 私はこうした経験から、いつも在住外国人の立場から考えることが自然にできていると考えています。 最終的に、共生から協働へということでのロードマップとしています。在住外国人の将来のあり方について考えたいと思います。
岡山県内の外国人は、約21,000人が外国人登録していると言うことですが、一昨年12月1日現在の岡山県内の外国人は 17,000人と発表されています。同じ県が発表している外国人数であっても両者には3,900人の差があります。 県国際課の資料は、市町村の外国人登録を合計した数字です。国勢調査の数字の方が小さいということは 、岡山県内に居住していない外国人の方が10%いるということを意味しています。皆様にはこの差を認識していただきたいと思います。 政府は、現行の外国人登録証を廃止して、外国人住民基本台帳を来年3月の通常国会で成立させて、切り替えていくと言っていますが、 これは日本に住んでいる外国人が、どこに居住しているかわからないという現状を問題視してのことです。
現在、在留資格は27種類ありますが、最も多い在留資格は「特別永住者」です。この資格者は年々減少していますが、 これは日本国籍に帰化されたり、亡くなられたりしたということが理由です。永住者の地方参政権の問題が出てきますけども、 永住者の地方参政権問題が議論されています。岡山市で見ると、「特別永住者」と「永住者」を合わせると約8,700人ですが、 20歳以上となると約6,000人になります。
毎年、全国で15,000人が日本国籍を取得していますが、それだけ外国に繋がる日本人が年々増加しているということです。 また、岡山県内には中国から帰国して生活をしている人も居ますが、そのうちの76%は生活保護を受けています。 これらのほとんどが高齢者で、日本語を覚えるのも難しいというのが実態です。
NPO法人も、行政と同じように外国人支援に取り組んできました。しかし、岡山県内の活動は、 首都圏からすると大きく遅れています。半年ほど前、岡山県国際団体協議会(COINN)国内支援部会が発足しましたが、 今日の研修会が初めての国内支援部会の取り組みです。これからも今日ご参加の方々と一緒に取り組んでいただければと思います。
「多文化共生ポータルサイト」には、「NPO法人メンターネット」も関わっていますが、岡山のNGOから行事などの情報提供をいただいて、 協力しようというものです。しかし、NGOの協力が少ないと思っています。
「NPO法人メンターネット」は、2年前から、留学生支援として、中小企業団体中央会などと協力して取り組んでいます。 毎年、留学生の就職などの相談を受けています。他にも通訳・翻訳を行っています。また、「ブラジル人学校」を作ろうと 言うことで、ブラジル人の子ども向けにボランティアの日本語教育や課題活動の面で協力しています。
また、岡山空港の国際便が増えるので、広島入国管理局の出張所新設を要望しています。 入管法改正案が来年3月までに国会に上がりますが、その中では研修生や外国人労働者の問題に関わる論議があると思います。

15:10 NGOからの活動紹介

(1) 岡山多民族多文化共生をめざす会(後藤正史代表)の講演です。
私たちの「めざす会」設立のきっかけは、元々、広島県福山市の外国人支援団体「ワールドシップ」から、 「岡山在住の外国人から相談がある」との指摘を受けたことでした。「めざす会」では、 これまで各種講演会や学習会を実施してきました。具体的な支援策として、「生活相談会」、「日本語教室」に取り組んでいます。 現在では、この2つの活動が「めざす会」活動の柱になっています。 私たちが重視しているのは、国際貢献などで直接外国に対して援助したり、単発で終了してしまうような支援をするのではなく、 継続的に日々の外国人の生活に関わるとことです。私たちの目指す国際化というのはまだまだ力を発揮していません。 私たち「めざす会」は、今後も様々なグループと協働して活動していきたいと思います。

(2) NPO法人岡山日本語センター(浦上典江理事長)~岡山県内の日本語学習支援について~
岡山県内の日本語学習支援は、1984年、「岡山日本語センター」の設立によって始まりました。 1997年には「岡山県日本語ボランティアネットワーク」が設立されました。 そのときは、東京日本語ボランティアネットワーク事務局長に来ていただいて、開設のきっかけを作っていただきました。 しかし2年すると、参加者はどんどん脱落していって、現在、会費を支払っている団体は1団体もありません。
岡山県日本語学習支援の現状は、同支援を取り扱う団体及び個人支援者が増加しています。 これはは、外国人(日本語学習支援を必要とする人)の増加によるものです。私たちが把握している支援団体の数としては、 26ですが、把握していないところがあるかもしれません。個人として支援されている方の数は不明です。 現在、岡山県内の日本語教室は、31あります。形態については、それぞれの事情によって様々です。
こうした教室は、それぞれの実状に合わせてされている方が良いと思います。今後の課題は、 「新たな岡山県日本語ボランティアネットワークの構築」です。重要なのは、私たちが岡山県全体として取り組むことです。

在留資格にある「永住者」と「定住者」の区別は何ですか?
永住者は、もともと日本に様々な資格で来られて、長く日本に住んでいることで永住者に移行されています。 他の資格は、1,2年で更新を必要としますが、永住者はそれを必要としていません。日本でどんな仕事もできます。 定住者は、インドシナ難民や日系3世の方が対象でして、日系ブラジル人の方が多いです。 定住者資格には、1,3年と更新があります。
子どもたちの問題について、学習支援の問題がありますが、それに対する取り組みを教えてください。
わからない授業を聞いている子どもたちは、授業時間が苦痛でしかありません。 自治体によってはサポーター制度を取っている所もありますが、そうでないところもあります。 私たちは、家庭教師の派遣ボランティアをして、学習支援に取り組んでいます。 また、地域の大学生とマッチングして取り組んでいます。子どもたちに意欲・自信を持たせてあげることが重要です。
15:35 閉会あいさつ(岡山県国際団体協議会・橋本徹泱事務局長)より。

本日は、長時間にわたり岡山県国際団体協議会の主催による研修会にお越しいただきましてありがとうございました。 この研修会は、当協議会の中で120団体中、11団体の方々が中心になって実行されました。 この結果は、岡山県の方に報告して、在住外国人支援者の力になれるよう役立てたいと思います。